2008年12月22日
秋刀魚の味
「 秋 刀 魚 の 味 」
小津安二郎
TSUTAYA レンタル
私が小学生の頃、
毎日、ゼロ戦に戦艦大和の絵を描いては戦争していた。
もちろん絵であるから動かないし拙いが、
それでも頭の中ではリアルに砲弾が飛び交い
アべンジャーは次々と撃ち落とされていった。
自身の効果音とともに火を吹いた46センチ主砲の
追い付かない鉛筆の炎が活況し、
敵機からは魚雷が放たれ、
舷側に命中、水柱の表現も激しく、
終いには雑誌で読んだ話の通り大和は爆沈するのであった。
一々同一画面で展開しなければならないので
本人ですら分からないほどの黒塗りの画面となり、
最後の最後は画を引き千切って紙吹雪となる、、、。
そして僕達はその後半世紀、
プラモデルというバーチャルを邁進する事となる、、、。
昭和30年代後半、映画はその頃である。
映画の中の「トリスバー」に流れる軍艦マーチは
家庭でもテレビからも流れ、
週刊少年雑誌もそれらで溢れかえってた。
下手すると運動会でも流れたいたんじゃないのか、
だから別に軍国少年である訳でもなく、
なにしろ戦後20年ほど経ってはいたのだ。
いやー、思い出すというか、
私達の知っているお父さんやオジサンが出てくる映画で、
シーンは酒の席ばかり。
今では酒も煙草も衰退しているが、
酒と煙草こそ人生、いや男の世界で、
これなしでは何も語れないし、
自然だったのが映画を見ていてよく分かる。
「お父さんまたお酒飲んで!」
と娘に言われる。
「オイ、お父さん、酒飲み過ぎるなよッ!」
と下の子に言われる。
「また酔っ払って、もう! 『どうもすみません』」
と妻に先立たれたお父さんは、
友達に介抱されながら帰ってきて、
娘に言われる。
うむ、懐かしい感じだ、、、、。
いや、懐かしがっている訳でもなくて、
ウチナーオトーは現役かもで笑えません、、、。
このように、
いろいろ思い出させてくれる映画だが、
リアルタイムで観た人たちはどうだったんだろう、
話を聞いてみたいものだ。
なにしろ「私達」は子供だったし、、、。
この映画は、物語らないし盛り上げない。
先だった妻の写真さえもサービスしないし、
娘の嫁入りの日「三つ指ついて」のシーンでさえ
「わかってる、わかってる」で引っ張らないし、
そこから物語らない。
すべてがそのように作られていて、
「その時、みち子には気が付きようもなかった」
などというナレーションも、もちろん無い。
見ている我々の方が、みち子さんなんか言いなさいよッ、
じれったいなどと思わないでもないくらいだ。
しかし、だからといってみち子さんは言いたい事を
言えないでいるというのではなく、
そのように収まるのである。
そこには主体が感じられない。
我々は主体を要求するようになっているのが分かる、
というよりも、
あなたの考えを聞かせて欲しいと登場人物にせがんでいるのだ。
でも、登場人物はそれですべてなのだ。
そんな事は無いだろうがと思うでしょうが、
これですべては語られているのだ。
むしろ、
今時のドラマや我々がの方が
ステロタイプな事を言っているだけなのに、
自分の考えだと思って話しているのかもしれない。
ここにはだからリアリティがある。
人の気持ちなんか分かる訳はないので
一々代わりに説明なんかしない。
いや、説明できない事も無いけれど
言い及ばない事でのリアリティの提出だと思える。
いや、
分からないが今の私達の気持ちでみると
そう言う風に見える。
我々は観察する事のみによって
この映画を見る事が出来るというものである。
いやいやこの映画は紋切り型でそれぞれが、
それこそステロタイプにメッセージしているだけで
古臭く感じるだけだ、というのはどうだ。
話をうんとずらすが、
ウチナー家族ならこれでも十分すぎるくらいの
会話になっていると思う事も出来るかもしれない。
何しろ日常会話の語彙の、単に言葉の数が、
歴然と違うと言う事も出来る。
もどす。
映画は「会話だけだ」ということも出来るくらいだ。
でも観者のあなたを介入させない、
あなたの思いになんかに応えたいとは思わないし、
意表なんかも絶対御免こうむりたいのだ。
それでも、迫ってくる誠実、実直なリアリティは何なのだ!
と感じる。
世界はこのようなのに、なぜあなたが考える、
考えないで見なさいと言っているようだ。
友達を「死んだ」とするジョークも
つましくオジサンらしくて秀逸だ。
面白いのは、このジョークの方が「物語」的であり、
映画の進行はウソっぽいのだ、
私はまんまとそのジョークにひっかかった。
ところで、24歳で行き遅れを心配されていたぞ!
それにしても若い岩下志麻が上品だ。
カワウソ
Posted by ネコとウソ at 21:08│Comments(0)
│映 画
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。