2008年12月17日
東京物語
「東京物語」 TSUTAYA レンタル
「 東 京 物 語 」
小津安二郎 監督
1953年 製作
TSUTAYA レンタル
話は聞いていたけれど何しろ55年前の映画だし、
2時間超すのもビックリだし、
どうしたものかと思いながら観たものの、
これがどうして私などが言うまでもなく
素敵な映画で、今日的ですらあるのでした。
映画が始まって間もなく驚いたのは
昭和28年(映画製作年)頃はこんな風に日本語が
話されていたという事である。
映画という事もあるかも知れないが、
皆丁寧で、子供は子供で「つまんねぇやい!」などと
真面目なクソガキぶりでリアルであった。
沖縄のガキには無いボギャブラリーだが、、、。
この映画はジィ(字)だけの映画である、、、。
場面も少なければ動きもあまりなく、
もちろんアクションなんか無い。
しかし見入る観者にはその会話から人生の悲喜交々が
流れはする。次男嫁の顔がアップになる度に
緊張と不安もはしる。
鉄面皮!?、あるいは完璧な笑顔であったはずが、
泣き崩れるとき顔を完全に覆い力の入った腕の震えが
その感情の強烈さを表現して余りもする。
この映画は、団欒の距離と顔のアップ。
ささやかな状況説明と、漫然とした風景ぐらいしかない。
最大のアクションが次男嫁の堪え鳴くシーンであり、
お婆さんが堤防で気分が悪いとフラついて立った堤防の
危なさくらいである。
故郷を出て東京に暮らす子供たちを尾道から老夫婦が尋ねる
というのがそのあらすじであるが、
映画自体会話だけで成り立っているものの、
そこにコミュニケーションは無い。
子供たちはそれなりに事情はあるものの、
まあ豊かに暮らし、
戦後8年であるからして時代の傷もあるが、
皆それぞれに相手を思いやっているものの
その会話には世間的通りいっぺんの内容しかない。
それでいながら相互に愛情を求める気持ちはあり、
それぞれに苦悶する。
「ありがとう」を連発しながらも「宿無しだな、、、」と
お爺さんが言ったりもする。
子供たちも「仕方が無い」を拠り所に、両親を遠ざける。
そんな中、お婆さんが亡くなる。
東京と尾道、電報では危篤の連絡あれど
「どうする兄さん」と困ったもんだとなる。
電報は危篤なのであるが、、、。
母が亡くなっても家族の一大事とさほどならず、
通常の生活としてつつがなく執り行われ、
何気に形見取りの話をし、了解して
それぞれの生活へ戻る。
つまり今時である、、、、。
我々は「言ってはいけないこと」
「干渉してはいけない」などと
思い込んでおり、いや、そこで主体など
出そうものならであるからして、
これを自然の事として受け入れ、にもかかわらず、
妻が亡くなると「もう少し優しくしてやるんだった、、、。」
と感慨したりもする。
しかし、この映画はそのような事
(コミュニケーションの無さ)を
語りたい訳でもないようで、
つまり、当節の社会事情というようなものを
言いたいのでも無く、また批判的というのでもない。
私達はこのように「暮らしている」という事の
事実(リアリティ)を提出しているだけ
なのではないかと思う。
であるから、
観者もその只中におかれる事で
同時的感覚がリアリティとして感じられるという
ものなのではないだろうか。
つまり、私達と瓜二つなのだ。
それが連綿と続く我々の暮らしであるといえる。
いや、その悲喜交々がではない。
そのように振る舞っている私達がいるという事だ。
その立ち居振る舞いに、その動作に、
その動作だけが展開されることに、
ビジョンや国やそういうものではない事による
リアリティそのものの表現という事になっている
のではと思われる。
そんなものに意味があるのかと、、、。
無い、そのような意味では無いが、
だから、意味がある事とは社長になるとか戦争の
事だろうか、、、。社長や戦争に意味が無いということに
気付かされるというか、そういう感じの世界だ。
カフカの「城」で、
男(為政者)なら他にやり方があるだろうにと思っても、
先に進めず、それどころか解決の出来そうにもない
女性とばかり熱心に話し、それらしい話はいくらでも出てくるが、
ちっともビジョンは展開しないばかりか、
翻弄されてゆく、、、、。
「城」などと大仰な感じがするものの、城には近づけない。
大義(?)が全然感じられない成り行きが「東京物語」にも
あるような気がする。
「せっかく尾道から来た」のに、
それも命をかけた来訪にもなるが、
そのようには話が展開しないし、
形見は貰ったが、それ以上ではないし、、、。
そういえば女性の方が話も多いし、男性はお爺さん以外は
これといって主張らしきものも無い、、、。
話としてどのようにも盛り上げる事が出来るが、
盛り上げない、、、、。
こんな話、為政者でなくとも面白くないと言いそうだ。
いえ、お勧めしているのです、もちろん!
獺
Posted by ネコとウソ at 23:17│Comments(0)
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