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2008年11月14日

ホテルカクタス

ホテルカクタス


       「ホテルカクタス」

         江國香織

        画 佐々木敦子

         集英社文庫

 「城」の話を書いていたら、

「城」のあまりのリアルさに困ってしまい、

でもそれが我々なのだということを

強く感じざる得ない訳で、そんな時、

横目に在ったのが「ホテルカクタス」。

 あー、どうしようかなどと、

「すうじの2」のように「江國なんか読んだら、、、」

と思ったが、カフカの呪縛を振り切って読むことにした。

 やはり素敵におしゃれだ。

アーバンクールというか、

それでいて優しく包み込むところがあり、

なによりオタクである。

この点において私は江國のファンである。

 人の付き合いは腹6分という人がいたが、

その通りで、

いやー6分ではどうしょうもないじゃないですかぁー

と親友派には怒られそうだがしかし、

そもそも親友という幻想に浸れるのは

中学生くらいまでで、よしんば高校生か。

ドーキューセイというのもあるが、

会社の社長や有名人になって集うのが関の山で、

親友ではあるまい、いや、わからんが。

人生の先輩によれば

「20年以上も別々に暮らしていたものが

一緒になって上手くやって行こうなんて虫が良すぎる」と

結婚について語った、卓見であると思う。


   「ホテルカクタス」である、、、 

 挿絵とのコラボレーション作品であるが、

その挿絵が哀愁、刹那を含んでいて、

アールヌーボーな螺旋階段や、バスルーム

がミーハー心を痛く刺激してくる。 

ただ、パリのようであるが、話の方は日本人の日本での

話に思われる、それでも挿絵とそれほどの違和感なく

読めるのも江國マジックなのだろうか、、、。

 私の好きな作家はエルスワースケリーだが、

時にその螺旋にそそられるのです。

でも、メニエール病寛解期の者としては、

螺旋階段は目眩誘発の何物でもないのだが、、、。

 「ホテルカクタス」というアパートに住む

3人の男の話で、名は「帽子、きゅうり、数字の2」である。

3人の性格はステロタイプ化されていて、

それぞれ、ハードボイルド?、体育会系、公務員だ。

 体育会系の「きゅうり」が

「濃緑色に日焼け」しているなら、

「帽子」はバス代が無くても、

「数字の2」が被れば一人分のバス代で乗れることとなる、

といった具合だ。童話の世界だ。

でも、そうではなくフツーの最近の若い?人達の話だ。

でも全編に流れるムードは大人のものであり、

素敵な女性も現れる。

江國にかかれば、これが何の違和感もなく

(いや、違和感も楽しめる)

入っていけるのだ。

 しかし、この3人だ。

彼女に振られる理由もそれぞれ明快だし、

旅行をすれば3人のいかにもの悲哀だが、

これらステロタイプに固められていても

江國の言葉に置き換えられると

柔和な世界が広がり3人が

愛おしくなる事請け合いである。

それが江國のお洒落マジックなのであるが、

だからウイスキーを飲みながらスラスラと読めば

また、「審判」(カフカ)も

読む気になれるというものである。



          獺





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