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2008年10月05日

カナディアンカヌー

カナディアンカヌー


       告別式

 中学生の時の同級生が亡くなった。

半世紀は生きたとはいえ、早すぎる死である。

子供も大きく、孫もいたが、

だからといって亡くなる理由は無い。

入浴中にクモ膜下出血で倒れたという。

 私の知る限りではつましい人で、

まあ、それでもよくしゃべり煙草をのみ酒も好んだようだ。

だからといっていかにもの体躯でもなく、

やはりつましかった。

 付き合いが頻繁だったのは二十歳前後で、

もう何十年も一緒に過ごしたという事は無かった、、、。

数年に一度の割で、偶然街でばったり会うくらいで、

3~4年ほど前だったか大きなスーパーの食品売り場で

孫を抱っこして嬉しそうにしている

彼に会ったのが最後となる。

 告別式には見覚えのある人達がいて、

亡くなったのが同級生とわかる、、、。

彼らが手を振り合図をくれた。

近づけば皆それなりに年をとり、

まあ最初の老化に浮足立っているといった感じか、、、、。

その中のオジサンが「元気か」と挨拶し誰だか分かるかと

他の人を指す、、、分からないが、

いや、分かるのだが名前が思い出せないし、

ずいぶん変身しているので無理だよ、と告げたかったが、

皆知ってるとニコニコ顔で返した。

だって、知ってはいるもん!

でも変身しているから万一間違いだったら

どうしょうと思っただけで、だって君達、スターウォーズ

に出てくる町の住民みたいなんだから、、、、ごめん。

私だって、じゅうぶん

「子泣き爺」だということは分かってます。

 亡くなった彼は何年かぶりかで会っても、

いつも会っている感じの人で、だから亡くなったといっても

自分は当分わかってないと思う、、、、。

 告別式は自宅で在った。

焼香の列に並んでいると頭上にカヌーが

吊下げられているのに気付く。

それは屋根だけの車庫に丁寧に吊るされていた。

全体にニスが細かく禿げているものの、

使えないというほどでもない、

心なしか今は主人を失い生気が無いといった感じだった。

どうしてカヌーなんかがあるのだろうと思った、

それもカナディアンカヌーだ。

今時の樹脂で出来たカヌーなら息子か誰かが

レジャーとして所有していても不思議は無い。

本人の物である感じは全然しなかった。

 私は泳げないし、釣りの趣味もない、

それにもう20十年ほどの持病である

メニエール病(寛解期)でボートなどとんでもなく、

あのアクアポリスのほんの僅かな揺れさえ

不快に感じるほどだ。

なのに、ここ数年何故だかカナディアンカヌーに興味が湧き、

時に雑誌やNEOSのショーウインドウに目をやっていた。

まあ、だれでも一度は興味を持ち、

用途を超えて欲しくなる美しい

カナディアンカヌーではある。

しかしだ、この沖縄でカナディアンカヌーはないでしょ、

湖にこそである。

 式が終わり、挨拶があり、しばし漫然とした時に、

傍に立っていたF君がなにげに

「あのカヌーは彼の手作りなんだ、、、。」と言った。

カヌーは丁度我々の正面にあった。

そして亡くなった彼は今送られるところだった。

「あッ!」と私は突然頓悟した。

そしてすべてがつながった、、、。

 亡くなった彼と私は、

何年も会わなくてもつながっている

感じがしたのはこれだったんだ、と。

つまり「物作り」だったんだと、、、。

 二十歳の頃に頻繁に付き合っていたのはやはり工作だった。

覚えているのは家のTOYOTAセリカを

「見た目GT」にする改造だ。

ディラーで買って来たパーツを装着するだけだったが、

なにせ新車のボンネットにハンドドリルで

穴を開けなければならなかった。

それには彼の技術が絶対、いや、ハンドドリルも必要だった。

もちろんうまく行った。

 そんな彼と街で会うとまた何かしら、

一緒にという訳でもないのに

物作りが出来るのだという妄想が、

私達を結びつけていたのじゃないのだろうか。

 さようならM君、

きっと向こうでも何かを作る事でしょう。

その時は私が気付くようにそっと教えてください。

あなたを思い出すためにも、、、。



         獺







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Posted by ネコとウソ at 21:42│Comments(0)カワウソの話
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