虞美人草 夏目漱石
虞美人草
夏 目 漱 石
角川文庫
十四五年前か。
本屋で立ち読みをしていると、
ページをめくる背後で、
通り過ぎるカップルの声がする。
「字だけの本って頭痛くなっちゃう~」
と女が言った。
その流麗なナイチャームニィーに恍惚とするも、
それってポッテカスーってことかしらとも思う。
でも七難隠していた。
がしかし、
ビデオレンタルショップに入るや否や、
店内に走り散る子供達に向かって、
「勉強のしか買わんよぉー」と、
声を張り上げるオカーと
何が違うというのだろう。
さて、
情景描写に戸惑いと、
自らの素養のなさを痛感するも、
その会話には今と変わらないどころか、
既にそのような表現は漱石で、
終わってたんだなと思う。
して、
「虞美人草」より以下引用する。
甲野さんが父の遺影の肖像画を見ている行で、
「見下ろすだけあって活きている。
眼玉に締りがある。
それもたんねんに塗りたくって、
根気任せに練り上げた眼玉ではない。
一刷毛に輪郭を描いて、
眉と睫の間に自然の影ができる。
下瞼の垂る味が見える。
取る年が集まって眼尻を引っ張る波足が浮く。
そのなかに瞳が生きている。
動かないでしかも活きている刹那の表情を、
そのまま画布に落とした手腕は、
会心の機を早速(さそく)に捕らえた
非凡の技といわねばならぬ。」
(P282)
これは絵画教室で使えるぞ!
ホホホホ、、、。
カワウソ
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