虞美人草 夏目漱石

ネコとウソ

2017年09月06日 23:38





      虞美人草

    夏 目 漱 石

      角川文庫

  
 十四五年前か。

本屋で立ち読みをしていると、

ページをめくる背後で、

通り過ぎるカップルの声がする。

「字だけの本って頭痛くなっちゃう~」

と女が言った。

その流麗なナイチャームニィーに恍惚とするも、

それってポッテカスーってことかしらとも思う。

でも七難隠していた。

 がしかし、

ビデオレンタルショップに入るや否や、

店内に走り散る子供達に向かって、

「勉強のしか買わんよぉー」と、

声を張り上げるオカーと

何が違うというのだろう。



 さて、

情景描写に戸惑いと、

自らの素養のなさを痛感するも、

その会話には今と変わらないどころか、

既にそのような表現は漱石で、

終わってたんだなと思う。

 して、

「虞美人草」より以下引用する。

甲野さんが父の遺影の肖像画を見ている行で、



「見下ろすだけあって活きている。

眼玉に締りがある。

それもたんねんに塗りたくって、

根気任せに練り上げた眼玉ではない。

一刷毛に輪郭を描いて、

眉と睫の間に自然の影ができる。

下瞼の垂る味が見える。

取る年が集まって眼尻を引っ張る波足が浮く。

そのなかに瞳が生きている。

動かないでしかも活きている刹那の表情を、

そのまま画布に落とした手腕は、

会心の機を早速(さそく)に捕らえた

非凡の技といわねばならぬ。」

(P282)


      これは絵画教室で使えるぞ!

        ホホホホ、、、。


          カワウソ

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