「ハゴロモ」 よしもとばなな

ネコとウソ

2009年05月31日 21:45




         「ハゴロモ」

        よしもとばなな

          新潮文庫


 男のプロジェクトが

結婚記念日のプレゼント方法程でしかないかと思うと

がっくりくるかと思うも、

みんなを「幸せにしてやる!」といって何万人も殺すよりいうまでも無

く良いのだけれど、、、。



 「でも私だって、実のところ、

  もしもみんなが等しく鳩を愛するだけの世界だとしたら、

  私はそこに住んで幸せだろうか?って

  いつでも考えてしまうもの。

  別の考えに触れた時の感じは、

  やっぱりいつでも衝撃的で、

  自分の世界が広がっていく気がするから。」

        (「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)

 と男の子が鳩を雛から飼って育て慈しんだものを、

浮浪者に食べられてしまったときに、るみちゃんが思い、言う。

そして(前後するが)、、、、



 「あのおじさんは君と見ている世界が違うから、

  自分の世界を大切にして、なんど壊れても作り直してね、

  って言うしかできなかった。」

     (「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)



   「そよ風さん」で、あるいはラブ&ピースで

       いようとする私達に

   自ら選択し関わっていく事の人生を突き付ける。



           さらに



 「川が私をぼんやりさせるように思うんだけれど。

  この町に帰ってくると、私は川に包まれ、川音に飲み込まれ、

  この町の人全員と同じように、なんとなく頭がぼうっとして、

  守られているような、光に包まれているような気がして、

  考えた方がいいことがどんどん流されていって、

  ひとつの大きな夢の中にいるような気がしてしまうの。

  それがこわいの。」(「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)

          の問いに、、、、

 「それはわかるけど・・・・代わりに東京には東京の、

  世界中どこの場所でも同じような、独特の夢があり、

  包み込む幻想があるのよ。

  みんな、自分は外側にいると思っているけれど、

  土地の見ている夢からは、決して逃れることはできない。

  自分の生き方を毎日続けていくと、

  ある日その仕組みが分かって、例えばここで言うと、

  川はますます大きな力に思えてくる。」

      (「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)

        と、るみちゃんは答え。



 「、、、、それが何を意味するかは、

  それぞれの道だと私は感じた。  

  私も私の内面を掘り下げいくことだろう、

  どこにいても。

  そして幻の外に一歩を踏み出せるかもしれないし、

  それはまた別の幻に移行するだけなのかもしれない。

  一生続く、勝ち目のなさそうな戦いだ。、、、、」

    (「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)

         と綴られる、、、。



  実体(「脳と仮想」茂木健一郎・新潮文庫)に迫れない私達

    であるから、その荒野に立つしかないわけだが、

    その荒野に他にも誰か居る事を願い生きていく内に

          人生があるのならば、



 「たとえどんな死に方をしても、

  どんなつまらないことの巻き添えになって

  死んでしまったのだとしても、

  そのお父さんの魂が汚れることは決してない。

  つまらない意図で、

  つまらない人生に行き詰ってはた迷惑な生き方や

  死に方をした甘えた人が決して、

  絶対に遺せないずっしりしたものが確かにあるし、

  それは、形を変えて絶対に続いていくはず。

  前にみつるくんが言ってたような、

  因縁とかおばあちゃんの偉大な足跡のあおりみたいなものも、

  確かにあるかもしれない。

  でも、その遺していく力の重みこそが、

  きっと人間が唯一このどうしようもなくたまらない世界の中に

  置いていける何かなのよ。」

    (「ハゴロモ」よしもとばなな・新潮文庫)

    ということを支えに十分意味を見いだし

      生きていく事が出来そうだと、

        急に死が身近になった

      「心筋梗塞上がり」は思った。



       
           カワウソ



 

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