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2010年01月10日

その男は、静かな隣人

その男は、静かな隣人


 
       「その男は、静かな隣人」

       TSUTAYA  DVD

 ナレーションからして、この正義感は、

まっとうな分だけ危険だなと思いながらも、

そして映画が始まって

金魚と話し始めた時も分かっていたはずだし、

彼を社会と対峙させる時の秀逸なカメラワーク

(彼の周りは高速に移動するにもかかわらず、

彼だけは自己空間を確保している、、、。)

にも気付いていたはずだが、始まった話に引き込まれ、

彼の妄想にどっぷり浸かってしまっている私がいた。

 一発のカートリッジが転がった時に、

妄想のスイッチが入ったのに気付かず

ラストで、いや、あれほど「6発目は、、、」と

韻も踏んでいたのに、、、

ラストでショックを受けるのであった。

 近年、精神病は「うつ病」を始め、

身近な病気との認識に一応至っているが、

実のところは「自分は大丈夫」という事を前提に理解しているから、

イザと言う時にはオロオロするばかりか、

忘れようとして救える人も失っているのが

実情ではないだろうか、、、。

治そうとするから治らないのが精神病であり、

本人の意識が変わらなければ治らないのに、

本人も家族の者も何かの間違いだと逃れる事をのみ意識するから、

ますます深みにはまり、

周りは「もう元気なんだから気のせいよ」と言って

忘れようとする。忘れてしまえるなら、

もう何年も前から始まっていたはずの症状が

消えないのはどういう訳か。

おそらく一般の健常者にはほとほと理解できる代物では

ないのかもしれないと思う次第である。

何故なら、妄想と言う意味を理解している人は

意外と少ないからである。

 人間が動物と違うのは「意識」することが出来るという事である。

つまり「考える事」が出来る。

考えるとは、いわば空想である。

 だからよく「余り考えるな」とか「よく考えたか」などと人は聞く。

もっともこの場合、この場合、

前者は「忘れろ」だし、後者は「考えずにこれにしろ」と

いっているのであって、

本当に考えを言うと叱られるか、妄想癖と言われるのである。

 メタフィジカルな空間に遊べる人には

「フィクションは現実である」ということを理解できるが、

そうでない人には「この物語はフィクションである、、、」

云々というキャプションを必要とし、

「本当にあった事」というフレーズには痛く弱い事となる。

真実なんていうのは映画「羅生門」を観れば済むことで、

まして「八百万」に在ってみればである、、、。

だから、必ずしも私が頓馬で

「その男は、静かな隣人」の主人公の話を鵜呑みにしたのではなく、

そのように勘違いするべくこの映画は操作されているのだと思う、

でなければ面白いと思わないはずである。

 主人公のその妄想はきわめてリアルに構築されており、

患者の妄想はこれほどまでにリアルなのである

(もちろん良く観れば、歪な部分があるのだが)

だからこそ一般的な健常者は騙され、真に受けるばかりに、

そういうことは妄想だと人に言いながら、

その妄想(病気)を相手に非難したり、叱責したりするのだ。

それはその病気の罠なのにである、、、

だからな治りにくいし、

治るにはその病気を構築したの年数分かかるともいわれるわけだ。

薬を処方され、大人しくなったからもう治ったと

周りは思いたいし、当然本人もそう思いたい。

しかし、その病気そのものを周りと本人が理解し、

特に本人がそれ(病気)を認めないと難しい、、、。

 さて、話は映画から逸脱ぎみであるが、敢えてそうしている。

このように映画だけではなく、精神病そのものを考えながら、

クロスさせて観ているとこの映画が2倍面白くなるし、

自らも病気ではないかという、極めて人間的理解に到り、

ワナワナして疲れるくらい良い映画なのである、

いや、タイムリーな映画である。

この不景気時、心して鑑賞したいものである。


         カワウソ







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Posted by ネコとウソ at 21:45│Comments(0)映 画
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