ネコとウソ

　えっ、私達のメシは、、、、。





　　　　　ライフラインが、、、

　数日前から体調を崩していた妻が、

ついに風邪でダウンした。

それでもスーパーに買い物に行くという。

「今日はやめなさい！」

とイッカツするも、食べる物がないという！

思わず、それでは私が買い出しに行くと、

のたもうてしもうた。

すかさず「無理！」と妻は言う。

やっ、メモを書いてくれればいいじゃないか、

といえば、筆談慣れしている妻はさっそく書き出したが、

書いてみるだけといったあんばいだ。

　メモを見るとミズナ云々と書かれている、、、。

暗号ではなく、いつもサラダに入っている葉野菜とのこと。

いきなりつまずくも、他の品を見てもよくわからないので、

ドレッシングなど、現物を見せられる。

妻もだるいのに、ここでいらん悶着をしても、

しょうがないと思ったらしく私を見送る。

私は、とにかくスーパーへ行くことにした。

　持病持ちの私は、車に等ひかれないよう注意しながら、

いつものスーパーへ急ぐ。

やっ、いつも散歩がてら妻とスーパーには行くのだが、

横に立っているだけで、もちろん荷物持ちはするのだが、

他に興味と言えば、

レジのお姉さんと「新潟へ一緒に逃げないか！」という

ファンタジーに思いを浮かべるだけで、

レジでの対応などトンと知らない。

耳聞こえないし、、、。

　して、流石我妻、

お買い物のお品書きとともに渡してくれたのが、

レジの人が話かけるのはアナタと「新潟へ逃げたい！」と

いう事ではなく、何やら聞かれたら以下のとおりに答えよッ！

という。

　　「袋詰めと清算は自分でやります。」

　　「マイバックは持ってます。」

　　「支払いは現金で、、、。」


　　　と言うようにというメモであった。

　　　　　　　　うむぅ～。


　スーパーの入口でカートを拾う。ここで、しばし躊躇する。

というのも、

近頃カートの取っ手やキャスターに問題のあるものが多く、

困るのだ。

そこで、事故歴無し、直進性良好を選ばなければならない！

そんないちいち細かい事いってたら買い物にならないじゃない、

と思われるかもしれないが、

やっ、これは大事なのだ。

というのも、移動中クソカートに当たった場合、

いちいち当て舵をしなければならないし、

突如横へズレて他のお客と接触しないとも限らないのだ．


　　　　　　これは大事である！



　　　　いざ、スーパーの扉は開かれん！　

自動ドアが開き、キラキラのリンゴやイチゴなどが私を迎い入れる。

果物に目を奪われている場合ではない、

ミズナだっ！

カートを押しながら、これは当たりのカートだなっ、

と一人悦に入っていると「ほうれん草」というのが並んでいる、、、。

して、ミズナは何処でしょ。

　棚に寄り掛かるように野菜を見ているうら若き人がいるではないか。

ここは、ひとつ遠慮などしないで聞いてみるか、と思ったが。

そのとなりにエプロン姿の野菜のおばさんに聞くのが順当であることは判るのだが、それでは面白くないではないか。

意を決して近づこうとしたら「新潟案」に気づいたか、その場を離れた。

見れば、その人が立っていた場所こそミズナの真ん前であった！

おおっ！思わず声をあげずにはいられない初老の紳士は、

アナタと縁があるやもしれんと妄想モードに入る、、、。

　メモは実によくできていて、ちゃんと順路を勘案している。

見知らぬ売り場をオロオロと徘徊させてはいけないという、

妻の愛情と見た。

　次は「ドレッシング」です。

ご承知でない方もいらっしゃるかもしれませんが、

ズラッと一棚ドレッシングである。

名称など知る由もなし、グラフィックを頼りに捜す。

意外や妄想も経ずにすぐにみつかる。

グラフィックにアーティストなので強いのです！

って。自慢にならないか。

　次が大変だ。

料理が全くできない私なので総菜を買ってくるように言われた。

メモには総菜２個ほどと書かれている、、、。

総菜コーナーへたどり着くと、

先ほどのうら若き方がいらっしゃるではないですか。

これは縁だッ！と思うのはおじさんだけで、

ただのシンクロニシティである。

うっかり総菜に近づいたつもりが、ストーカーと思われて、

「初めてのお使い」がとんでもない事になってもいけないので、

遠目で観察するもみな同じに見えてどーにもである。

そうこうしているうちに空いたので、まじまじ近づいてみるも、

衣に覆われた総菜共の中身がわからん。

だから字を読めと！

茄子のナンチャラ、グルクンのあんかけなどと表示している。

　わからないのであるが茄子を買う。


　次も困った。

牛乳である。赤い箱だそうだ、、、。

みればほとんど赤いではないか！

ブライトレッドなのか、ライトマゼンタか難しいところだ。

ええぃとピュアレッドと思しきパッケージにした。



　　　　さぁーて、件のレジだ！


　　　　　　どーしゅる、、、。

　さいわい時間がずれていてレジに人出があまりない。

これ幸いと、あのぉ～耳が聞こえないのでと言いながら、

ツタヤのカードを渡しレジ用のメモを読み上げる。

にこやかな対応に思わず眼がしらが熱くなる。

大げさなと思う向きもあるやもしれんが、

歳を取ると何でも嬉しくなるのだ。

　ここでなしてツタヤのカードなのかしらなどと疑問に思っては

牛乳が傷むので説明しない。


　　　　　　　やっと袋詰めだ！

　しかし、ものが不揃いなのでなかなか袋に収まりが悪い。

何度か入れ直す。

　　　　　カートを戻して表へ出れば、

　　　　　　　日が暮れていた！

という事もないが、どっっとお疲れ様なのでした。

　　　　　　　　ところで、

　メモには無かったが、妻の好きな桃のゼリーと、

　　　　　　　非常時なので、

　　　　独身のころよく食べた銘柄の、

　　　　　カップめんも籠に入れた。



　　　　　　　　　　カワウソ