潜水服は蝶の夢を見る

ネコとウソ

2009年01月11日 22:27


   


     「潜水服は蝶の夢を見る」

     ジュリアン・シュナーベル
 
     TSUTAYA DVD


 どのみち世界は不条理に満ちているのだから、

わざわざ金まで払って見るなんて、

愚の骨頂では無いかというご意見もあろうかと思いますが、

それでも、とにかくこれは見といた方が良いでしょう。

明日まで100円なんだし、、、。

 たとえ今あなたが若く、

「結核患者となって、安アパートの2階で

唸っているという三文文士」を想像できたとしても、

やはり見といた方が良い。

まして入院などした事が無いという人は特に必見だし、

今幸せで気が狂いそうなら尚のこと観ましょう。

 都合全身不随になる。動くのは瞼だけ、、、。

相手の言っている事は明晰に分かり、

こちらの言う事は話せないので全然伝わらない。

そんな状態にアナタがなったのならどうします

愛人もいたりして、、、。

 愛人はともかくも、妻はもちろんのこと、

周りの人達が、

つまり医者や看護師、リハビリの人、

友人及び仕事の関係者など、

たくさんの信じられないくらいに良い人達が揃わないと、

こうはならないという事であるだろうし、

さらに出来るなら、

出来なくともすこぶる経済状態が良くなければならないのである。

だからむしろ観者はヤキモチを妬かないでもないのだ。

 「奇跡の物語」というのではない、

むしろ話は淡々とし、

状況もそうは変化しない毎日が続くだけ、

そんな中での暮らしだ。

そう、暮らしだ、

あなたは暮らせるかという事だ。

暮らせるのなら幸せになったようなものであるとも思えてくる。

いやもちろん元気で健康であるに越した事は無いのだが、

それでもこのような事にあなたもなってしまう

可能性が相当にあるのだから。

そうなってしまってから「何で俺だけが!」

というような事にならないためにもである。

 雑誌の編集長だったのでもあるから、

そこはそれ教養も経験も愛人もいる事だし、

ゆえに「暮らせた」とも思えてくる。

しかしだ、

人生はあなたがそれなりの人となりになるまで

待ってくれるとは限らないし、

実は私とて30代の初めに

「メニエール病」になるなんて思ってもみなかったのだから、

その時愛人が居たのが救いだったということもなく、

いやしかし誰か居た方が良い事は確かである、

私もその誰かは居たからこそ今日までやってこれたのだし、

いや、私の話はいいとして、

映画の彼は自分に残されているものに気付いた。

これだ、これです、これなんです、

これさえあれば、

人はたとえどのようになっても生きていくことが

出来るかもしれない!



          彼は言う、



  「私には『想像力と記憶』が残されている。」



 生きているという事は「想像力」の事だし、

その拠り所となるのが「記憶」だ。

 想像力こそが生きていく事の証であり、

そのことによって生きている。

想像力その「イメージ出来る力」こそ生きる源であり

そこから開けるのである。

我々は健康だから幸せなのでは無く、

お金持ちだから、妻が超絶美人だからでもない、

想像する事の出来る力こそが私達を幸せにしてくれる。

ひいては創造力ともなる。そうなれば世界さえ作り出せる。

 「お金だけでは幸せになれない」などと言いながらも、

情緒的に語っているだけで、

いっこうにお金から思考が離れられないのは

その想像力の貧困からではないか。

その想像力はどこからやってくるか「記憶」である。

単に経験を指すものではなく、記憶の積み重ね、

その錯綜がある時ひとつのイメージとなって結実する。

その想像力の多寡?はボギャブラリーにも起因するだろう。

記憶力では無い、

記憶した事の総量から押し寄せてくるイマジネーション、

その想像力があなたを救い、かつあなたであることを主張する。

そこに生きていける自信と世界が開けてくる!

  ということが、ここぞと思い起こされる映画だ!



         観ましょう!



 ところで、この映画の大人なところは、

あるいはリアリティは「奇跡」に無く、

まして「実話を元にした」からでもない。

受け入れる思考もさることながら、

「話せないのに、電話を引くなんて、

無言電話をかけるつもりか?」と電話屋さんが話すとき、

このジョークを笑えるあなたがいるかどうかである。

そこにもまた生きる想像力がある。



        ところで、、、、



 入院したとしよう、

いや別にそんな大そうな事で無くともである。

午前2時、

尿瓶を片付けてほしいと思う、

看護師を呼ぶ、

しかし、コレ片付けて、というのも芸もないし、

なんだか悪い気もする、それで考えあぐねた結果、

「リセットしてもらえますか」とキュートな看護師に言った。

すると彼女は

「捨てて来てって言ってる訳?」

と言った、、、。



       想像力は難しいかも、、、。


           カワウソ





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